Published on 8月 11th, 2013 | by yasuyo
0「衿を正す」ってどんな意味?
「衿を正す」、「袖をぬらす」、「袂を別つ」、「袖の下」……
きものの部位が用いられた慣用句はたくさんあります。
では、それらの慣用句が表す状態をイメージしてみてください。
感情のひだを過不足なく表現してくれる“しっくり感”がありませんか?
「衿を正す」で背筋が伸び、「袖の下」で何となくやましい気持ちが湧き上がってきたりして……。
これらの慣用句が今なお私たちの心の機微を表現しうることに、きものが非日常となった現代人にも脈々と息づく、“対きもの感”のようなものを見いだすことができます。
きものには、長い年月をかけて培われた日本人としてのDNA、精神性をぐいぐい刺激する魅力があるのです。
さて、次に私の大好きな短歌をご紹介しましょう。
わが妹子が 偲びにせよと 付けし紐 糸になるとも 我は解かじとよ (万葉集巻第二〇 朝倉益人)
意味はこんな感じでしょうか。
いとしい女が、思い出のよすがにせよと言って、衣服につけてくれたこのひも…。ボロボロにほつれて糸になっても、私はほどきませんよ~
長い別れを目前にした男女が「ひもを結ぶ」という行為に込めた切ない思いにぐっときますよね。どこかエロティックでもあります。
いっぽう、帯の語源を「緒を結ぶ」だとする説があります。
また、結ばれた男女の間にできた男の子(彦)だから「結彦(むすこ)」で、女の子(姫)だから「結姫(むすめ」というのだと。
さらには、神聖な場所を区画する意味で結ばれる神社の注連縄や、家族の無病息災・家内安全を願って結ばれるお正月の注連縄にも、「結ぶ」という行為に込められた人々の信仰心にも似た特別な思いを見いだすことができます。
帯の語源も諸説ありますが、できれば、着付を学ぶみなさん、特に若い女性たちには、これらの説を頭の隅において帯を結んでほしいと願っております。